僕が八極拳を練習するとき、散手練習を行うとき、また、合気道の練習を行うとき、共通して注意していることがあります。
それは伝統武術でいう「歩法」と言われる部分です。なぜ、僕が「歩法」に注意を払って練習するようになったか?
それは、ある名人の影響によります。八極拳を知っている人ならば当然、呉連枝老師の名が一番に浮かぶと思いますが、呉連枝老師に御会いする以前の話なので、残念ながら違います。(呉連枝老師からも大きな影響を受けていますが、それはまたの機会に譲ります)
その名人とは、形意拳、八卦掌等で有名な、沙国政老師(故人)です。
七堂先生が沙国政老師と、娘さんを招聘したときに、1度だったか、2度だったかお会いすることができました。その当時、僕は練習を始めて数ヵ月程度だったと思います。NHK文化センターに、七堂先生が沙国政老師と、娘さんを連れて来て「せっかくだから、みんなも一緒に練習したら?」と、言われたのがきっかけでした。
僕は失礼ながら、沙国政老師のことを知らず、髭の長い御爺ちゃんといった印象を受けました。指導された内容もよくわからず、なんとなく時間が過ぎていく・・・そんななかで、対練套路の練習となったときです。二人で組になって練習するのですが、誰も組んでくれる人がなく、一人ポツンといると、沙国政老師が、にこやかに手を取って、相手をしてくれたのです。
多分、形意拳の対練だったと思うのですが、なんともいえず不思議な体験をすることになったのです。
それは、相手の動きが見えていて、動きも速くは感じないのですが、滑らかな動きに何も反応できず、沙国政老師が迫ってくるのを、ただ見ている。
沙国政老師の動きは、「油をひいた滑らかな床を転がる球体」・・・そんな感じでした。
技や秘伝を教えてもらった訳ではありません。ただ、沙国政老師に対練で相手をして頂いただけです。
時間にしたら5分・・・もっと、短かったかもしれません。
しかし、それだけのことなのですが、僕が受けた影響は大きく、その不思議な体験が元になり、僕は特に「歩法」について、練習するようになりました。
今でも、その時の沙国政老師の動きは、僕の中で一つの目標となっています。
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